広告アカウント所有権は誰のものか

アカウント所有権が自由にならないとどうなる?

個人用のメールアドレスのアカウントをお持ちの方で「実はこのメールアドレスは貸与されているものなので自分には所有権がないのです」という人は、2018年の現在でどのくらいいるのだろうか。

法人用のメールアドレスであれば当然仕事の道具として使用しているため個人に所有権はなく、退職する際は会社に返却するべきことは疑問の余地はないだろう。一方個人のメールアドレスはどうだろう。2000年前後のメール文化であれば、メールアドレスは契約先のインターネット接続会社のもので、インターネット接続会社を変えるたびにメールアドレスは変更しなくてはならなかった。携帯電会社も同様で、このメールアドレスを押さえているがゆえに他社サービスに乗りかえされないのではという布石にもなっていたように思える。

2018年の我々はどうであろうか。デジタルコミュニケーションの重要な手段として使用しているメールアドレスは多くの方がGmailなどのフリーメールを使い、LINEやFacebook、InstagramなどのSNSを使用しているため自由に携帯キャリアを変えることができる。

さて、このアカウントだが最初にアカウントを作成する際にお手伝いしてくれた恋人がいたとしよう。その恋人と別れることになった際「アカウントを開設し、セットしたのは僕だから、今後は新しい彼に新しいアカウントを作ってもらいなよ」と言われたらどうだろうか。

それまで蓄積されてきた数々の友人たちとの貴重なコミュニケーションの記録やアドレスなど、貴重な情報が引き継がれないことになってしまう。サービスによってはエクスポート、インポートをすることで引き継ぐ方法はあるのかもしれないが、いずれにしてもとても困ることになるのである。

デジタル広告のアカウントの現状は?

デジタルマーケティングにおいても、自社で行動したデータの蓄積の所有権がどこにあるのか関心がない人が多い。デジタル広告、特にGoogle広告においてはAI化がどんどん進んでおり、施策を行えば行うほど数々の有益なデータが特定のアカウントに蓄積されているにもかかわらず、である。

広告代理店としてはこのアカウントの管理者権限を保持している限り他社に乗り換えられるリスクが低くなり、好都合なのではないだろうか。僕の経験則で恐縮だが実質、アカウント解説を依頼したクライアントに管理者権限を解放してくれないところが多い。管理者権限=所有権ではないと思うが、所有権は代理店にあることにして、そのアカウントをクライアントが借りている状態で運用されている。

自社のデータを使用して育ててきたAIデータが自由に使えなくなる、またはイチからやり直して蓄積していくリスクを取るのであれば、多少コストが高くても、コミュニケーションや成果に問題があっても、勇気をもってNoと言える人は少ないのではないだろうか。

これからやってくるAIデータ活用時代においては、このアカウントの所有権を自社で持たせてくれるかどうかが大きな意味を持つことになるのは、間違いないだろう。

デジタルデータの権利がサイト運営者にある時代の広告運用を

そのような時代が来たときに対応できる代理店はどこにあるのだろうか。

僕たちアシタバシードはそんな素朴な疑問からスタートしてみることとした。

デジタル広告の特にリスティング広告(Google広告)を扱う代理店としては生命線かもしれないアカウントの所有権を、「お客様自身の持ちものです」と明らかに謳い、「我々では満足できなかった際に、他社様と引き続き広告を運用する際はどうぞこれまで蓄積してきたマーケティングデータを丸ごと持って行ってください」と提案するのは大きなチャレンジである。

他社がやらないからこそ、まずは僕たちがやってみてお客様に喜んでもらえるのか。我々代理店は信用を保持し続けられるのか、真剣勝負の運用が始まるのではと考えている。

Photo by Hunters Race on Unsplash